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できることなら ずっと ぼーっとしていたい

出来ることならずっとボーっとしていたい。背もたれのある椅子に座ったり、柔らかいソファーに寝転がったり、居心地のいい空間でずっと。口の中がネバついて気持ち悪くなるまで煙草を吸って、静かで少しサイケな音楽でも聴いて、昔のことを思い出してやんわりと嬉しくなったりやんわりと悲しくなったり、自分のことや他人のことや世界のことをテーマにしたあまり中身のないひとりトークをひとりで聴いて、疲れたら帰りたい。眠りたい。そう思う。

 

 

「できることなら ずっと ぼーっとしていたい」

 

 

有限なもの、時間とかお金とかを追いかけたり追われたりしながら僕は暮らしてる。なんだか恐れ多くて生活を営んでるとまでは言えないけど、とりあえず暮らしてる。2016年2月〜2017年4月の間は某大学とその付属病院の警備員をやってお金を稼いでいた。本当に退屈な仕事で接客なんてものはほとんどない、ましてや人と会話することが一切無いといっても過言ではないような仕事だった。シフトは大体8時〜19時あたりで、イレギュラーな日は夜遅くなることもあったけど、それでも22時には必ず部屋に帰れた。日曜日と祝日は休みだったし、警備員のルールとして3時間以上休憩なしで稼働してはいけないというのがあるらしくて、休憩もトータルで1日2時間はあった。今までまともにバイトをしてこなかった自分には充分な給料を貰えたこともあって、それなりにマジメに頑張った。社会不適合者にはピッタリの仕事だ。

 

偶然、母校の中学校と同じ名前を冠した「◯◯門」のすぐ側にある箱(プレハブ小屋)の中でラジオを聴きながら1日10時間くらい椅子に座っていた。もちろん呼びかけだの施錠だの細かい仕事はあったけど、サボろうと思えばいくらでもサボれる。僕は警備員のコスプレをしてTBS,InterFM,J-WAVE,TOKYO FMのラジオ番組に耳を傾けて脳ミソにアイロンをかけていた。そうすることで気持ちが落ち込まないようBADにならないよう気をつけた。こんなに楽な仕事もできないのは成人済みの大人としてまずい。収入がなくなることは飢えに繋がるし、助けを乞える家族や友達も思い浮かばなかった。なにより自分の無駄に高いプライドがそれを許さなかった。そういう危機感があったから。

 

朝昼夜と同い年くらいの男女が笑い合いながら僕がいる箱の前を通り過ぎていく。何百人もの学生と偉そうな先生、事務員、付属病院のスタッフ、大体毎日顔を合わせては微妙に挨拶を交わすだけの関係。顔は知ってるけど名前は知らない、希薄な人間関係。その人達を眺めては生意気に観察・考察で暇を潰してた。妄想もたくさんした。僕が煌びやかなキャンパスライフを送っていたら、東京生まれだったら、偏差値の高い進学校に通っていたら、スポーツや芸術ができて賞なんか貰ったり、キレイでカワイイ美人の同級生と誠実かつヤることヤってる破廉恥なお付き合いができたり、付き合ってもないナオンとワンナイト・トキメキをトゥギャザー出来たら、絵が上手で高校生で漫画家デビューとかガリレオガリレイばりの早熟さで音楽シーンに登場!とか。小説家っつーのもいいなあ。警備員やってるけど実はコンビニの小説書いてるあの人みたいなカンジで、趣味で、創作意欲のためにあえて警備員やってるんです僕は〜。とか。今の記憶を持ったまま家庭環境や身体を自由にカスタマイズできて、もう一度、中学校入学くらいから人生やり直せないかな。強くてニューゲームってやつ。

 

そんなことばかり考えて僕は箱の中にいた。周囲との差や自分の低学歴っぷりに打ちのめされて、保身の為に斜に構えた態度を取ってはイヤなことから逃げ続けて、名実共にダメ人間になっていた。今もそうだけど。バンドはあきらめた。センスや才能をカバーするだけの情熱が足りなくなった。日々に感動を見出せないから。このままでいいのか。何か変わりたい。なんで変わりたいのかって生きてる実感が欲しいから、出来るだけ感動したいから。ぼーっとするのは楽で気持ちいいけど時間や金からは逃げれない。宝くじは買っても当たらない。タイムマシーンが完成しても心にはタッチできない。多分、自分に自信がないから。目標もなく守るものもなく親友も恋人もいない。家族とも仲良くない。居場所がない。正確にはあるんだろうけど、納得できなかった。傷つきたくないけど傷つかなきゃ得られないであろう何かが欲しい。ずっとぼーっとすることはできない。チルアウトの意味がズレる。不屈の魂を持つ男になりたいな。矢吹丈とかブラック・ジャックみたいな。色んなものが欲しい。卑しい人間なんだスマン。でもいちばん欲しいのは友達と死ぬほど笑ったり泣いたりするドラマを共有することかな。中学生の頃みたいにお腹が痛くなるまで笑いたい。基本的に笑いたいもんな、なるべく。なにか面白い話ないの?って。感動したいな、虚しさ以外の強い気持ちが欲しい。でも本当にぼーっとすることはスンバラシイんだ。全部ゼロになる。楽チンだ。でももったいないっていうか若いんだし、、外に出なよ、、立派な大人になりんしゃい。人付き合いもちゃんとできる自立した男にだけ訪れる幸せってあるよ、多分。だけど疲れるんだ動くことは。運動しないとツキはまわってこない。無限に時間があれば無限にお金があればずっと虚無でもいいかな。マジで?無限じゃないけど。ええーー。低学歴が考えてもキリないな!疲れたし眠ろう。ちゃんと早寝早起き出来れば大丈夫だよ。おやすみなさい。もう死んでもいいな。マジで?おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はあーだこーだ考えながら箱の中でぼーっとしていた。

それは気持ちよくもわるくもあった。

まだ分からないけど、とりあえず貯金をしよう。

適当に行動しよう、もう死んでるみたいなもんだし。。

気がついたら春が通り過ぎようとしていた。

僕はNSC東京23期生になっていた。

 

 

 

 

 

まだ箱の中で

 

 

 

 

 

 

 

ロング

 

 

 

ボイド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショートホープ